いまでは普通に本で小説を読むことも好きですが、長い間、ラジオドラマや朗読を聴く方が好きでした。
小・中学生のときには、活字などろくに追っていませんでした。逆にストーリーを音でとらえると、すーっと物語の世界に入っていけたのです。文字を読むよりも、聴覚の刺激で鮮やかに想像が広がっていきました。
幼稚園生くらいの頃、寝床で母親から創作怪談を聞かされて震え上がり、怖がりながらも、何度も同じ話をリクエストしたことを覚えていますが、思えばあれがきっかけだったのかもしれません。
その物語は断片的にしか覚えていませんが、こんな話でした。
転校生の女の子がある日、突然に行方不明となってしまいますが、捜索の手がかりはまったく掴めない状況に。しかし、通っていた学校を調べてみると、下駄箱になぜかその子が履いていた靴がきちんと揃えられて残されていた―――。
耳だけが頼りの物語世界は蠱惑的でした。いま聴けばたぶん大したことのない、ラジオドラマの官能シーンも小・中学生の自分にはえらくエロく迫ってきたものです。
官能シーンをテープに録音して学校へ持って行って仲間うちで流したら、ちょっとした騒動になったこともありました。中二病の楽しい思い出です。
幸いいまは、古いラジオドラマや朗読の放送音源をYouTubeに上げてくれている人が何人もいて、いろいろと楽しめます。
TBSの「ラジオ図書館」で放送された、阿刀田高さんの傑作短篇集『恐怖同盟』からの抜粋三作がとても面白いので、リンクを貼っておきます。
ラジオ向けに脚色されていて、原作を読むとかなり手が加えられているのが分かるのですが、ともかく素晴らしいショートドラマ集に仕上がっています。
またお会いしましょう。