ようやく新型コロナ禍前のように自由に旅行できるようになり、ゴールデンウィークにソウルへ旅立ちましたが、ソウルは二度目で、下調べのために事前に読んでいた「ソウル おとなの社会見学」(大瀬留美子著)というとっても面白いソウル本に紹介されていた、史跡や遺構やレトロ喫茶店を中心に巡ることにしました。
いわゆるレトロな喫茶店、大規模チェーン店ではなく、創業時からの個性と雰囲気を守り続けてきたような喫茶店を韓国語では「タバン」と言うようです。
テハンノ(大学路)の通りに面したハンニムタバンや、延世大学近くのなかなか高いビルに入居しているトッスリタバンや、ウルチロ(乙支路)のせせこましい路地の奥にあるコピニャハッパンなどは、「ソウル おとなの社会見学」で見つけたり、ネットの記事で探したりして、しらみつぶしに訪ねて行き、コーヒーとお菓子を堪能してきました。ただ、うっかりしていて、タバンの目玉とでもいうようなウルチロにあるウルチタバンという店には行かずじまいでした。痛恨の極みです。
ハンニムタバン、店内の様子
ソウルは異常にカフェの多い街です。2018年の年末に初めて旅したときには気づきませんでしたが、さして有名ではない地下鉄駅の駅前、例えば僕が宿をとった、ソウル駅の一つ先にある地下鉄4号線スクミョン女子大学の駅前でも、スターバックスが2店舗、メガコーヒーという韓国地盤のチェーン店が1つ、ア・トゥサム・プレイスというチェーン店が1つ、他にもテイクアウト専用らしきチェーン店が1つ、そして宿のすぐそばにもお洒落なカフェがある、といった具合に、カフェだらけです。
おかげで、東京ならどこでも混んでいて疲れるスターバックスが、客が分散するせいでソウルでは空いていて居心地がよかったりしました。
カフェが多いのは良いのですが、結論から言うと、レトロな喫茶店(韓国ではタバン)を楽しむには東京の方がだんぜん有利です。「ソウル おとなの社会見学」の大瀬さんによると、ソウルは東京以上に街の再開発が目まぐるしく進んでいるそうで、この前見つけた素敵な店や場所が次に行ったときには消えているというような変化の激しさがあるそうです。
事実、本を頼りに探したレトロビル(旧・味の素京城事業所)が、今回のゴールデンウィークでは見つけられなかった経験をしました。おそらく、取り壊されたのだと思います。
韓国の人はタバンのノスタルジーより、新しくてお洒落でwifiがさくさくつながるチェーン店の便利さをとるのかもしれません。あいにく僕はソウルの一部しか知らないし、釜山や大邱にはタバンがいろいろあるかもしれませんが、ソウルでこうなので、韓国の他の都市も同じかもしれません。
そうすると、東京はアジアでも稀な″レトロ喫茶店天国″かもしれません。香港には「地球の歩き方」に載るような有名店(フォンダガーフェイとか)がありますし、台湾にもいくつかあるようですが、数でみればおそらく東京がナンバーワンじゃないでしょうか。
中国もベトナムも廃止した元号を大切に残していたり、いまだにガラケーを使う人がいたり、タワレコやディスクユニオンやレコファンやバナナレコードなどのCDショップが健在だったりする日本は、古き良きカルチャーがよく保存される貴重な島国なのかもしれません。
トッスリタバンはビルの8階にある