Dear-Abbadoのブログ

折々の雑感を綴っていきます。

元ネタを見つけた

五木寛之さんの代表作の一つに「大河の一滴」というエッセイがある。かなりの部数が出版され、三國連太郎の出演で映画化もされた。五木さんの実体験をベースに、五木流の「人は皆、大河の一滴」という運命観というか人生観、生命観で全編が貫かれている。

その元ネタを最近になって発見した。元ネタというか、「人は皆、大河の一滴」というレトリックの原型を見つけたのだ。それは志賀直哉のエッセイ。岩波文庫の「志賀直哉随筆集」を読んでいたら、その最後に収められた一編の「ナイルの水の一滴」に以下のことが書かれていた。

『人間が出来て、何千万年になるか知らないが、その間に数えきれない人間が生れ、生き、死んで行った。(中略)例えていえば悠々流れるナイルの水の一滴のようなもので、その一滴は後にも前にもこの私だけで、(中略)その私は依然として大河の水の一滴に過ぎない。(以下略)』(上掲書より抜粋)。

おそらく五木さんは志賀直哉のこの一編を読んでいるはずだ。読んだ内容が五木さんの人生体験とともに熟して、誕生したのが「大河の一滴」なのだ。

志賀直哉も、もしかしたら誰かの小説か随筆を読んで影響を受け、「ナイルの水の一滴」を書いたのかもしれない。