Dear-Abbadoのブログ

折々の雑感を綴っていきます。

アバドの¨太鼓連打¨

アバドがヨーロッパ室内管弦楽団を振ったハイドン交響曲103番¨太鼓連打¨、これは本当に良いディスクだ。録音は¨95年3月・フェラーラ¨とあるから、アバドがまだ元気だった頃の録音になると思う。

一楽章の冒頭、ティンパニがスカッと鳴り渡る。マイクがその音をよくとらえていて、こんなに決まったドラムロールは聴いたことがないくらい。その轟きの後を引き継ぐチェロ、コントラバスファゴット、そしたまたその後を継ぐフルートの美しさ、弦のしなやかな鳴りも素晴らしい。ティンパニが随所でしっかり鳴って、自己主張している点も良い。

ヨーロッパ室内管弦楽団は小編成のオーケストラだが、響きが厚くない半面、密で、アバドの棒によくついて弾み、よくしなる。若く瑞々しい音楽が、自ら身を乗り出して駆け出していく感じ。まるで、もぎたての果物から甘酸っぱい香りが発散するのような、鮮度の高さがある。

また、録音の良さも演奏の美点をよく伝えている。残響は適度、各楽器の分離もよく、音域のバランスがよいので耳が疲れない。

¨太鼓連打¨は、カラヤンベルリンフィル(81-82年)とビーチャム/ロイヤルフィルを聴いたことがあった。しかし、アバドの演奏に出会って僕は初めてこの曲に開眼したと言ってもいい。とにかくフルオーケストラの演奏からは聴こえてこない音が飛び出してきて、ハイドンはこうでなくっちゃ、と感心してしまう。

古楽器オケでもピリオドアプローチでなくても、こんなにフレッシュなハイドンを聴かせることができるのだから、やはり指揮者、奏者の力量次第なのだ。アバドの素晴らしさを証すディスクは数多いので、これからも当ブログで紹介していきたいが、この演奏は間違いなくその上位に属するものと言える。