Dear-Abbadoのブログ

折々の雑感を綴っていきます。

クープランの墓 (アバド/ロンドン交響楽団)

ブログのタイトルがDear-Abbadoなのだから、たまにはちゃんと、指揮者クラウディオ・アバドのことも書いておこうと思う。

アバドが残した名盤の一つに、ラヴェルの「クープランの墓」がある。僕の愛聴するディスクだ。アバドロンドン交響楽団音楽監督のポスト(1983年就任)にあって、ドイツグラモフォンへ数多く録音していた時期の一枚。1987年11月、ロンドンのオール・セイント・トゥーティングでの録音とある。

元々はピアノ組曲として作曲されたこの作品は、原曲から二つの楽章(フーガとトッカータ)がカットされて管弦楽版に生まれ変わった。フランスの先輩作曲家クープランへのオマージュとして、そして「18世紀フランス音楽全体に捧げられたオマージュ」(ライナーノーツより)として書かれた。

プレリュードから哀感が漂う。オーボエの淡い音色が美しい。ロンドン響の都会的で、良くも悪くもローカル色の薄いクールな響きが切なく、溜め息が出そう。

初秋の青空、風に吹かれ消えていく煙草の煙。日が落ちてかけて、窓に灯りがともった喫茶店。そんな他愛のないイメージが浮かんでくる。

アバドが振るとき、僕はその息づかいをよく感じるのだけれど、このクープランの墓も、アバドの慈しむような音楽と呼吸が聴こえる。

疲れ、とぼとぼと家路を辿るような雰囲気のフォルラーヌ。束の間の喜びを噛みしめ、そして静かに散っていくメヌエット

終曲リゴードンでは、アンサンブルは整然と進行しながらも、中間部でオーボエが奏でるモノローグの孤独感、受けつぐフルートの寂寥、クラリネットの倦怠がやりきれない。中学生の頃、このフルートのフレーズを聴くたびに胸が苦しくなったものだ。

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