Dear-Abbadoのブログ

折々の雑感を綴っていきます。

音楽小辞典をめくる

音楽評論家の吉田秀和氏が書かれた文章を読んでいると、音楽用語がわりと頻繁に出てくる。楽譜が読めない人には分かりにくい表現が登場したり、ときには譜例が引用されていたりもして、難儀することもある。これは、言わんとするところを正確に読者に伝えるために吉田氏がやむを得ず採った方法なのだろう。それまで単なる印象表現に片寄りがちだった音楽評論を確固たる分野にまで高めた吉田氏の、読者に対する誠実さの表れとでも言えるだろうか。

僕はクラシックの評論を読むのが好きだし、楽器を習っていたこともあるので、ごくごく一般的な音楽用語は知っているつもりだった。しかし、例えば「レチタティーヴォから、アレグロ・マエストーゾを経て、ピウ・アレグロに高まる大憤慨のコロラトゥーラを持ったアリア」(吉田秀和 ¨一枚のレコード¨ ~ダントンとサドの世紀~より引用)などという文章にぶつかってしまうと、もう分からなくなる。そこで、ついに音楽辞典を買うことにした。

あんまりハードな辞典では使いこなせない気がしたので、音楽小辞典(音楽之友社)という小さな辞典を購入した。リズムやテンポなど基礎的な言葉からさらい直し、徐々に難易度の高い用語へと進んでいっているけれど、これがとても楽しい。

音楽小辞典に収載されているのは、メインが西洋音楽に関係した言葉なのだが、例えば「ソナタ」という一つの言葉の解説に約2ページもの紙数が費やされているのを見たりすると、西洋音楽の発展やその滔々たる時間の流れ、音楽に人生を捧げた無数の人々の存在が感じられるようで、本当に圧倒されてしまう。