Dear-Abbadoのブログ

折々の雑感を綴っていきます。

村上春樹とクラシック音楽

村上春樹さんの著作、「意味がなければスイングはない」と「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を立て続けに読んだ。村上さんがクラシック音楽に造詣が深いらしいことはなんとなく知ってはいたが、この二冊を読んでみて、感服させられた。まず驚かされたのは、古今の演奏(名盤)をよく聴き込まれていること。「意味がなければ・・・」では、シューベルトピアノソナタ第17番を取り上げているのだが、なんと15種類のディスクを聴き比べて、それぞれ論じている。恥ずかしながら私はこのソナタを聴いたことがないし、どんなに好きでも15種類ものディスクを持つほど入れ込んでいる曲はない。村上さんは作家だから、比較的長く家にいてレコードやCDをゆっくり聴く時間を持ちやすいという面はあるのだろうけれど、単に「クラシックが好き」といったレベルをはるかに超えている。小澤さんとの対談でも村上さんは、専門的な音楽の知識をほとんど持ち合わせていないにもかかわらず、小澤さんの音楽づくりにまつわる深い話を聞き出せている。小澤さんが若い頃にシカゴ交響楽団ボストン交響楽団と録音したレコードなども、小澤さんと出会うかなり前から買い込んで愛聴していたようだ。もちろん、対談の準備ということで、改めて買ったり聴いたりしたレコードもあっただろうけれど、小澤さん自身も忘れていたような演奏も含めて本当によく聴いたうえで真摯にインタビューしている姿勢には感嘆を禁じ得ない。若い頃から海外に出て、国内でよりも海外で高く評価されている存在として、村上さんはたぶん小澤さんに自らを重ね合わせてみている部分もあるのだろうと思う。小澤征爾さんのCDは一枚も持っていなかったが、次はタワレコで買い込んでこようと思っいる。