Dear-Abbadoのブログ

折々の雑感を綴っていきます。

真言の発音について

真言は、日本では真言宗天台宗をはじめ、浄土真宗を除く多くの宗派で唱えられている。念仏を専らとする浄土宗でも真言は用いられていて、「浄土宗のおつとめ」には霊前供養のときに唱える陀羅尼が記載されている。チベットでも、観世音菩薩の真言である Om Mani Padme Hum がよく唱えられているし、聖なるマントラとして路傍の石にさえも刻まれているという。

真言は仏の世界の言葉であり、それぞれの真言にはもちろん色々な意味があるのだが、昔から意味より音が大切とされてきた。例えば「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ」(薬師如来真言)など、真言は一般には理解できない、聖なる音そのままの連なりで構成されている。

問題は、音が重要とされているにもかかわらず、日本で唱えられる真言は元来のサンスクリット音とかなり異なっていることだ。「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ」の元の音は「オーン フルフル チャンダリ マータンギ スヴァーハ(Om Huru Huru Candari Matangi svaha)」だから、全然違うと言ってもいいくらいに違っている。真言は日本にもたらされた当初は原音に近い音が保たれていたと思うのだが、千数百年を経るうちに日本人が発音しやすい音へ自然と変容していったのだろう。

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光明真言などは、真言宗天台宗でも少し発音が違うし、元の音である「オーン アモーガ ヴァイローチャナ マハムードラ マニ パドマ ジュヴァラ プラヴァルッタヤ フーン」と「オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン」(真言宗での読み)とを比べてしまうと、大丈夫だろうかと思ってしまう。

如来や菩薩、天部の諸尊の供養、祈祷や礼拝には欠かせない真言だが、仏様が人間にお示しくださった元の音からかくも隔たった発音で唱えて、はたして仏様に届くのかというのは誰しも感じるところだろう。

僕も日常的に真言を唱えていて、サンスクリット音を真似て唱えることも日本風の発音で唱えることもある。そして、この発音問題に関する結論は自分としては明確に出ている。たとえ日本訛りで真言を唱えようとも、「仏様は必ず聴いてくださる」ということだ。

その証拠に、ある天部の神に日本風発音の真言で祈り続けて確かな霊験をいただいたことを挙げたい。今夏のことである。礼拝要典を用意し、すべて読誦するには長過ぎる一部経文を手前勝手に省略したりしながらも、具体的には書けないが、始めてから半月ほどでご利益をいただいたのだ。横浜の弘明寺である祈祷の様子を拝見したときも、僧侶は十一面観世音菩薩の真言を「オン マカ キャロニキャ ソワカ」とはっきり日本風の発音で唱えていた。

もし、訛った真言では諸尊に届かないというのであれば、真言宗天台宗は長い間、無意味なことをやってきたということになる。しかし、歴史的に日本密教は霊験が確かなために多くの貴族に重用されてきたし、現代でも多くの人たちがその祈祷からご利益を授かっている。

皆さんも、真言を唱える機会を持ったら、自信を持って日本風の発音で唱えていただければと思う。ただし、心を込めて、何度も繰り返し唱えることが大切だ。