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Dear-Abbadoのブログ

折々の雑感を綴っていきます。

バレンボイム、素晴らしいじゃないか!

ずっと気になっていたboxセット、ダニエル・バレンボイムシュターツカペレ・ベルリンによるベートーヴェン交響曲全集を買った。

実はこの全集、Youtubeに音源がすべてアップされていたので事前に少し聴いてみたのだが、その素晴らしさにびっくり。渋谷のタワレコにいそいそと出かけ、ずっとためつすがめつしていたこのboxを買ってきたというわけだ。

1~9番まで全部聴いてみて、特に良いと思ったのはエロイカ、4番、9番というところ。もちろん他の交響曲も文句なし。特段変わった解釈は見られず、直球勝負な中にベートーヴェン交響曲の個性が最良な形で息を吹き込まれている。エロイカは、冒頭のあの二つの和音がずっしりかつ超燦然と鳴り響く。例えはおかしいけれど、まるで横綱の鮮やかな立合いを見るかのよう。9番は、滔々たる流れに身をゆだねるうちに、音楽の中に小さく点った炎が最終楽章に向けてめらめらと燃え盛っていく。

バレンボイムフルトヴェングラー信者で、レコードはすべて聴いて研究したらしいが、演奏スタイルがフルトヴェングラーに似ていると指摘する人は多い。確かにこの全集でも、9番の第一楽章冒頭なんて、フルトヴェングラーバイロイト祝祭管による例の9番の出だしにそっくり。地の底から沸き上がったような音が、次第に何かの形をまとい、目の前に聳え立っていく。響きに雑味があるところもよく似ている。フルトヴェングラーアインザッツをあえて揃えないよう奏者に指示していたというが、バレンボイムもこうした響きを出すために色々計算しているかも知れない。

あるいはシュターツカペレ・ベルリンの持ち味なのか、バレンボイムの指示なのか、このベートーヴェン交響曲全集は不思議に、全編くすんだ色合いの弦が聴かれる。悪く言えばもっさり、良く言えば燻し銀の伝統的ドイツオケの音とでもいうのか。一方で管楽器は柔らかく伸びやかな音を聴かせてくれる。録音もすこぶる良くて、その点でも高く評価したい。9番第4楽章の途中でバレンボイムの唸り声とおぼしき音が入っているのまで分かるくらい録音は明瞭。

最後に一言。バレンボイムに関しては食わず嫌いでずっときてしまった。やれ「有り余る才能を湯水のごとく無駄遣いしている」だの「ユダヤ財閥をバックにパリ管の音楽監督の首をつないだ」だのボロクソに言われ、日本のクラシック界では、評論家はもとより一般層からも遠ざけられてきたのが、ダニエル・バレンボイムだ。でも、今回この全集をちゃんと聴いてみて、ノックアウト。完全に認識を改めさせられた。先入観を持ってはいけない。バレンボイムに懐疑的な人がいたら、まずとにかく聴いてみてほしい。バレンボイムは素晴らしい!